ニュースの概要
エスビー食品は、10月31日と11月1日に東京・神田地区で開かれる「神田カレーグランプリ2026 グランプリ決定戦」に特設ブースを構える。ブースのテーマは「カレー粉ってなんだろう?」。スパイスやハーブの香りと特徴を、見て、嗅いで、比べながら学べる展示を用意する。中心となるのは、7種類のスパイスとハーブを自分で組み合わせて、世界に一つだけのカレー粉を作る「オリジナルカレー粉ブレンド体験」だ。参加は抽選制で行われる予定である。カレーの優劣を競う祭典の中で、あえて料理の手前にある「粉」の正体を問いかける構成が特徴といえる。
引用元: エスビー食品、神田カレーグランプリでオリジナルカレー粉の調合体験を実施(食品産業新聞社ニュースWEB)
分析・見解
料理の前にある「粉」を主役にする逆転の発想
神田カレーグランプリは、街の店が作る一皿を競うイベントである。来場者の視線は、どうしても完成した料理の味や見た目に向かう。そこへエスビー食品は「カレー粉ってなんだろう?」という素朴な問いを持ち込んだ。皿の手前にある素材へ話を戻す、いわば逆向きの発想だ。
カレー粉は、複数のスパイスを混ぜ合わせた調合品である。ただ、多くの人は中身を意識せずに使っている。誰もが知っているのに、正体は知られていない。この空白こそ、体験型の展示が埋めやすい場所だ。
7種類という数が体験として成り立つ理由
今回は7種類のスパイスとハーブを組み合わせる。どれを選ぶかは元記事の要約では分からないが、一般にカレー粉にはターメリック、クミン、コリアンダーなどが使われる。色を付ける役、香りを立てる役、辛みを足す役と、働きは分かれている。
数が多すぎると、初めての人は迷って手が止まる。少なすぎると、違いが出にくい。7種類は、役割を理解しながら遊べる現実的な数だと考える。自分で配合を決めると、買う側から作る側へ立場が変わる。その瞬間に、商品への見方も変わりやすい。
抽選制が語る、体験施策ならではの制約
参加が抽選制になる点にも意味がある。調合には1人あたりの時間がかかり、スパイスの量や衛生管理、スタッフの手も必要になる。誰でも並べば参加できる形にすると、待ち時間が膨らみ、ほかの展示の印象まで損なう恐れがある。抽選は混雑を整える現実的な手段だ。
一方で、外れた人には別の接点が要る。そこで、香りや特徴を体験できる展示が受け皿になる。当たった人だけが満足する設計ではなく、通りがかりの人にも「カレー粉」という言葉を考えさせる二段構えが見て取れる。
ルウ中心の家庭に、粉の価値を思い出してもらう長い勝負
日本の家庭のカレーは、固形ルウが主流である。一方、近年はスパイスから作るカレーに関心を持つ人も増えた。神田のようにカレー店が集まる街では、その熱がとくに高い。この熱を専門店の世界に閉じ込めず、家庭の台所へつなげる入口が「自分のカレー粉」だと読める。
成果は、その場の売上には出にくい。粉の使い道を知った人が、数か月後に炒め物やスープへ使うかどうかで決まる。短期の販促というより、粉という市場そのものの底上げを狙う長期戦といえるだろう。
ビジネスへの影響
完成品ではなく素材の理解を売る視点
食品メーカーや飲食店は、つい「おいしさ」を完成品で伝えようとする。しかし、素材や工程を見せると、価格や品質への納得感が増す。今回の取り組みは、その典型例である。自社の主力商品が何でできているのかを、手を動かして理解してもらう。説明を聞くより記憶に残り、家庭でも話題にしやすい。
自社で応用するなら、原料の産地、配合の違い、加工の工程などが「見せる材料」になる。
小さな会場でも使える三つの工夫
第一に、選択肢を絞ることだ。7種類のように、迷わない数に抑える。第二に、定員と時間を決めることだ。抽選や予約制にすれば、品質を保ちやすい。第三に、参加できない人向けの受け皿を置くことだ。香りを嗅ぐ、見比べるといった、数十秒で終わる体験でよい。
予算が限られる地域の店や中小メーカーでも、この三つなら取り入れられる。
成果は来場者数ではなく帰宅後の行動で測る
体験イベントは、人が集まると成功に見えやすい。だが本当の価値は、帰宅後に使われるかどうかにある。応募者数、参加者アンケート、後日の購入や再来店を見て判断したい。体験後に使い方を書いたカードを渡す、次回の来店で使える案内を添えるといった仕掛けも有効だ。作ったものを何に使うかまで案内すれば、体験が一度きりで終わらない。
なお、応募情報などの個人情報を扱う場合は、利用目的を明示し、必要最小限にとどめることが前提になる。
