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クラフトコーラの成り立ち
本ページの制度の説明は、厚生労働省と消費者庁の公開資料に基づく概要です。許可や表示の実際の要否は、商品の中身や販売方法によって異なります。製造や表示に関する具体的な判断は、管轄の保健所や専門家にご確認ください。
クラフトコーラは、スパイスや柑橘類、砂糖などを煮出してシロップを作り、炭酸水などで割って飲む飲み物です。「クラフトコーラ」は法令上の区分ではなく、小規模な製造者が、素材や製法にこだわって作るコーラ風味の飲料やシロップを指して使われている呼び名です。清涼飲料水としての表示や許可は、一般の飲料と同じ制度の枠組みの中で扱われます。
事業者の公開情報から、成り立ちの一端が読み取れます。広島県福山市のジンジャーダイヤモンドは、2010年に創業し、10年以上ジンジャーシロップを主軸に生姜製品の製造・開発を行ってきた工房で、その波及としてクラフトコーラの製造を始めたと、公式サイトのOEMページで説明しています。同社は、生姜をすりおろす、煮出す、絞る、ペーストにするという四つの製法を使い分けて、味の違うシロップを作るとしています。大阪府和泉市のミールファームは、ジャムや蜂蜜、ピクルス、瓶詰などの加工食品に加え、クラフトコーラ等の飲料も製造しており、スパイスや果物にこだわったクラフトコーラのOEMを案内しています。
こうした事例に共通するのは、もともと食品加工の経験を持つ小規模な事業者が、スパイスや果実を使ったシロップの製造に広げたという流れです。カフェや雑貨店、百貨店の催事などで、店のオリジナル商品として扱いたいという要望が、OEMの需要を生んでいる様子も、各社のページからうかがえます。
OEM(受託製造)の流れ
OEMとは、他社の依頼を受けて、その社名やブランドで販売される商品を製造することです。自社に製造設備や許可を持たない事業者が、自分のブランドの商品を持つための手段として使われます。クラフトコーラのOEMでは、依頼する側がレシピや味の方向性を示し、受託側が試作と製造を担う形が一般的です。
ジンジャーダイヤモンドの公式サイトには、商品開発の流れが次のように示されています。第一に、味比べです。打ち合わせの前に、OEMサンプルセットで工房の味を確かめます。第二に、お打ち合わせです。味、量(ロット)、用途などを聞き取ります。第三に、お見積りです。工数や材料を見定めるために簡易試作を行い、1回目は無料と記載されています。第四に、試作・開発です。2〜3回の試作を重ねて味を決めます。第五に、発注です。味や量が決まったら、約2週間程度のリードタイムで生産するとあります。第六に、生産と納品です。希望の納期に合わせて製造し、納品します。
ミールファームの公式サイトは、原料の調達から製造、充填、パッケージのデザイン、出荷まで一貫して任せられると案内しています。ラベルデザインの作成を他社に依頼することがないため中間マージンが発生せず、全体的な製造コストを抑えられるという説明もあります。大阪の有機JAS認定工場で製造し、200キログラムの蒸気釜を設置していることから、小ロットのご依頼も承ると記載しています。
スパイスそのものを使うブレンドのOEMもあります。カネカサンスパイスの公式サイトでは、自社でオリジナル商品を販売したいが製造設備がない、複数の調味料や添加物を頻繁に計量・配合している、オリジナル商品を小ロットから製造したい、という事業者に向けて、OEM製造の受託が可能な商品の例と依頼のフローを案内しています。ヒビキスパイスの公式サイトにも、既存商品における容量の特殊規格や小ロットからの対応、ご要望に沿った原料加工を行うOEM受注製造の案内があります。事業者ごとの事実項目は【比較表】スパイス調合・カレー関連のEC・サブスク・OEMに掲載しています。
清涼飲料水の製造に必要な許可
飲料を製造して販売する場合は、食品衛生法に基づく営業許可が関わります。2021年6月1日に完全施行された改正食品衛生法により、営業許可の対象となる業種は32業種に再編されました。厚生労働省の資料に示された許可業種の一覧には、飲食店営業、菓子製造業、そうざい製造業と並んで、清涼飲料水製造業が含まれています。クラフトコーラのシロップを製造して販売する場合は、製造する物の内容や工程によって、清涼飲料水製造業などの許可が必要になる可能性があります。
OEMで委託する場合は、製造を行う委託先が、必要な営業許可を受けていることが前提になります。委託先の公式サイトで許可や認証の記載を確認し、不明な点は委託先に直接尋ねます。ミールファームのように有機JAS認定工場であることを案内している事業者もありますが、有機JASの認証は食品衛生法の営業許可とは別の制度です。両者を混同せず、許可の種類と認証の種類を分けて確認してください。
自社で製造する場合は、営業許可の施設基準に適合する厨房や設備が必要です。自宅の台所や、飲食店営業の許可のみを持つ厨房で、販売用の飲料やシロップを製造できるかどうかは、製造する物と販売の形によって変わります。計画の初期の段階で、施設の図面や製造工程の概要を持って、管轄の保健所に相談することが、後戻りを防ぎます。また、スパイスを仕入れて小分けして袋詰めし販売する場合は、食品の小分け業の許可が関わることがあります。この点はスパイスの仕入れと輸入でも触れています。
食品表示基準で押さえる表示事項
容器包装に入れて販売する加工食品には、食品表示法に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)が適用されます。消費者庁のページによると、容器包装に入れられた一般用加工食品及び添加物には、食品表示基準に基づき、栄養成分の量及び熱量の表示(栄養成分表示)が義務付けられています。義務付けられているのは、熱量(エネルギー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)の五つの項目です。
加工食品の表示では、このほかに、名称、原材料名、添加物、内容量、賞味期限または消費期限、保存の方法、製造者または販売者の氏名・名称と住所、アレルゲンなどが基本的な事項になります。クラフトコーラのシロップであれば、使用したスパイス、果汁、糖類、酸味料などを原材料名として正しい順序で記載し、アレルゲンを含む場合はその旨を示します。消費者庁は、アレルゲン表示などの取扱いを、食品表示基準に係る通知・Q&Aとして公開しています。
OEMの場合は、販売者として自社の名称を表示するのか、製造者として委託先の名称を表示するのか、製造所の固有記号を使うのかといった点を、委託先と事前に確認します。表示の最終的な責任は、食品表示を行う事業者にあります。ラベルのデザインを進める前に、表示事項と記載の位置を、保健所や消費者庁の公開資料に照らして確認する手順が安全です。
表示にあたっては、飲料の風味や素材の説明と、健康への効果をうたう表現とを、はっきり分ける必要があります。健康の保持増進に関する効果を著しく事実と異なる内容で示す表示は、健康増進法で禁止されています。素材やスパイスの効能を示すような言葉を、ラベルや広告に使わないことが基本です。この点は調合AI・パーソナライズと薬膳スパイス市場で詳しく整理しています。
小ロット製造の考え方
小ロットでの製造は、在庫リスクを抑えながら新しい商品を試せる点が魅力です。ジンジャーダイヤモンドの公式サイトは、小ロット対応を「200mlで200本〜」とし、200mlで100本も応相談としています。ひと鍋ずつの手作り製造のため小ロットで生産でき、喫茶店、カフェ、雑貨店、百貨店などの小ロットのPB商品開発に対応できると説明しています。ミールファームも、小ロットから受託すると案内しています。
小ロットには、単価が高くなりやすいという側面もあります。試作の回数、原料の仕入れ単位、容器やラベルの最小発注単位が、少量でも固定的にかかるためです。事業計画では、1本あたりの製造費用に、容器、ラベル、箱、送料、販売手数料、在庫の保管費を加えて、希望する販売価格で採算が合うかを確認します。数量の増減による単価の変化は、見積りの段階で複数のパターンを依頼すると、比較しやすくなります。
スパイスの調達も、小ロットの課題になります。ホールスパイスは、使用量が少なくても、仕入れの最小単位が決まっている場合が多く、余った分の保管が必要です。シロップに使うスパイスの種類を絞ると、仕入れの手間と在庫の管理が楽になります。仕入れ先の選び方は【比較表】国内スパイスメーカー・輸入卸・小売が参考になります。
販売価格と原価を仮定の例で考える
OEMでシロップ商品を作る場合の採算の見方を、仮定の数値で示します。以下の数値はすべて説明のための仮定であり、実際の見積りや相場を示すものではありません。
- 商品は200ミリリットルのクラフトコーラシロップ1本。1回の製造は200本と仮定します。
- OEMの製造費用(原料、製造、充填)は1本あたり600円、容器・ラベル・化粧箱は1本あたり150円と仮定します。
- 販売価格は税込1,650円(税率10パーセントとして税抜1,500円)、ECの販売手数料は税抜価格の10パーセントと仮定します。
この前提では、1本あたりの原価は750円で、原価率は税抜価格に対して50パーセントです。販売手数料が150円かかるため、手数料を差し引いた粗利は600円になります。200本をすべて販売できた場合の粗利は120,000円です。ここから、試作費、デザイン費、送料、広告費、在庫の保管費、売れ残りの損失を差し引く必要があります。試作費やデザイン費は製造数にかかわらず固定的に発生するため、数量が少ないほど1本あたりの負担は重くなります。
このように、小ロットの商品では、原価率だけでなく、固定的な費用を何本で回収できるかを考えることが大切です。見積りを取る際は、製造費用に何が含まれ、何が別費用になるのかを項目ごとに確認します。また、賞味期限の設定は食品を製造する事業者の責任であり、根拠を持って決める必要があります。OEMの場合は、設定の考え方を委託先と事前に取り決めておくと、販売開始後の食い違いを防げます。
販売の経路と注意点
完成したシロップや加工品の販売経路は、自店での対面販売、カフェや雑貨店への卸、百貨店の催事、自社EC、モール型のECなどがあります。経路ごとに、必要な表示、梱包、配送の条件、手数料が異なります。冷蔵や冷凍の管理が必要な商品か、常温で流通できる商品かによって、選べる経路も変わります。
通信販売で販売する場合は、食品表示に加えて、特定商取引法に基づく表示も必要になります。広告やSNSでの商品紹介では、素材の説明と効果の説明を混同しないことが重要です。「体に良い」「疲れが取れる」といった言葉を使うと、健康増進法や景品表示法の観点から問題になる場合があります。商品の魅力は、素材の産地、製法、味の特徴、使い方の提案といった事実に基づいて伝えます。
一次情報の確認先
- 厚生労働省:営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し(許可業種に清涼飲料水製造業を含む)
- 消費者庁:栄養成分表示、食品表示基準
- 消費者庁:健康増進法(誇大表示の禁止)
- ジンジャーダイヤモンド:OEM・PB受託製造
- ミールファーム:クラフトコーラのOEM、コンセプト
- カネカサンスパイス:カネカサンスパイスについて、ヒビキスパイス:公式サイト
