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SPICE & CURRY BUSINESS REPORT

スパイス市場とカレー業態の全体像

輸入統計、メーカーの規模、カレー店の倒産動向を、公表資料の範囲で一枚の地図にまとめます。

色とりどりの香辛料の袋とシナモンスティック、八角が並ぶスパイス市場の売り場を上から見た様子

最終更新日:

スパイスの商いを三つの層で見る

本ページの数値は、農林水産省、帝国データバンク、各社の公式サイトなどの公表資料に基づいています。公表資料で確認できなかった項目は書かず、「公式サイト参照」と表記しています。

スパイスやカレーの業界は、台所で使う小さな粒から外食の一皿までが連なっているため、どこから眺めるかによって景色が大きく変わります。当サイトでは、この連なりを大きく三つの層に分けて整理します。第一の層は、産地で採れたスパイスを輸入し、選別や殺菌を行って食品原料として整える「原料と加工」の層です。第二の層は、それを卸や小売、EC、サブスクといった経路で事業者や家庭に届ける「流通と販売」の層です。第三の層は、スパイスを使って実際にカレーや飲料などの商品を作り、お客様に提供する「提供と活用」の層で、カレー専門店や間借り営業、キッチンカー、クラフトコーラの製造者などがここにあたります。

三つの層は互いに影響し合います。たとえば産地の天候や為替の変動は、原料と加工の層の仕入れ価格に現れ、やがて流通の層の販売価格や、提供の層の原価率に波及します。反対に、スパイスカレーやクラフトコーラのように消費者の関心が高まると、小さな事業者が提供の層に参入し、少量で質の高い原料を求める動きが流通の層に生まれます。業界を理解するうえでは、一つの層の数字だけを見るのではなく、三つの層のつながりを意識することが大切です。

このページでは、まず輸入統計から市場の大きさの目安をつかみ、次に国内のプレイヤーの種類を整理します。そのうえで、カレー専門店の動向と、スパイスカレー、間借り営業、EC、サブスクといった新しい業態の広がりを、公表資料の範囲で確認します。個別の事業者の事実項目は【比較表】国内スパイスメーカー・輸入卸・小売と【比較表】スパイス調合・カレー関連のEC・サブスク・OEMに掲載しています。

輸入統計に見る香辛料の規模

国内で使われるスパイスの多くは輸入に頼っています。農林水産省は、財務省の貿易統計をもとに、農林水産物の輸出入を「農林水産物輸出入概況」としてまとめています。この概況には「香辛料」という品目があり、その内訳としてこしょう(乾燥)やしょうが(生鮮)の数量と金額が掲載されています。2022年(令和4年)の概況では、香辛料の輸入数量は114,206,389キログラム、つまり約11万4千トンで、輸入金額は約520億円(51,958,484千円)でした。前年に比べると、数量は10.3パーセント、金額は31.3パーセントの増加と記載されています。

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年香辛料の輸入数量香辛料の輸入金額こしょう(乾燥)の輸入数量
2020年(令和2年)105,168,872キログラム35,096,212千円9,428,259キログラム
2021年(令和3年)103,581,532キログラム39,565,896千円9,078,838キログラム
2022年(令和4年)114,206,389キログラム51,958,484千円11,050,231キログラム

出典:農林水産省「農林水産物輸出入概況」2020年・2022年版(財務省「貿易統計」を基に作成)。2021年の値は2022年版に併記された前年の数値です。最新の年次は農林水産省の統計ページで確認してください。

表を見ると、数量は2020年から2022年にかけて約9パーセント増えた一方で、金額は約48パーセント増えています。同じ期間に数量の伸びより金額の伸びが大きい点は、単価が上がったことを示唆しています。ただし、金額には為替の影響や品目構成の変化も含まれるため、価格の動向を一つの要因だけで説明することはできません。こしょう(乾燥)は2022年に数量が前年比21.7パーセント、金額が75.6パーセント増加しており、品目によって動きが異なる点も、概況の記載から確認できます。

輸入統計を読むうえでの注意点もあります。「香辛料」という統計上の区分と、事業者が「スパイス」と呼ぶ範囲は、完全には一致しません。クミンやカルダモンのように個別の品目で数量を把握したい場合は、財務省の貿易統計の品別国別表を参照する必要があります。また、数量はキログラム、金額は千円で記載されているため、トンや億円に直す際は、換算の誤りに注意が必要です。当サイトでは、公表されている数値を丸めずに表に載せ、本文では概数を併記する形をとっています。

国別の輸入先や品目別の内訳は、年によって変動します。新井清太郎商店の公式サイトには、同社が輸入するスパイスの品目ごとに、タイプ(ホール、パウダー、フレークなど)と産地が掲載されています。たとえば胡椒はインド、マレーシア、ベトナム、クミンシードはインド、クローブとナツメグはインドネシア、カルダモンはグアテマラといった具合です。事業者の公式情報は、統計では見えにくい「どの産地からどの形で入ってくるのか」を知る手がかりになります。

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国内のプレイヤーを四つの型で捉える

国内でスパイスを扱う事業者は、大きく四つの型に分けて考えると整理しやすくなります。

家庭用と業務用を担う総合メーカー

エスビー食品は、公式サイトの会社概要で、スパイス&ハーブ、即席、香辛調味料、インスタント食品その他の製造販売を事業内容としています。創業は1923年、設立は1940年4月5日で、本社は東京都中央区日本橋兜町にあります。会社概要には、単体の売上高が2022年3月期の103,898百万円から2026年3月期の125,772百万円へと推移したことも記載されています。ハウスギャバンは、ホテルやレストラン、食品加工メーカー、コンビニエンスストア、ケアフード、給食などの業態の顧客に、スパイスやカレーなどを中心とした業務用製品を製造・販売していると、公式サイトの事業領域に記載しています。

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原料を加工する専門メーカー

カネカサンスパイスは、世界中から年間5,000トン以上のスパイスを輸入していると公式サイトで説明しています。選別や殺菌、粉砕、配合を大規模に行う工場を滋賀県と茨城県に持ち、会社概要には売上高221億円(令和7年3月)、従業員202名と記載されています。ヒビキスパイスは、にんにく、しょうが、唐辛子、各種スパイス類を扱う業務用の製造販売企業です。

輸入卸・商社

小林桂は1883年の創業で、香辛料、香料、ナッツ類、製菓原料などの輸出入と国内販売を行う商社です。神戸市にスパイスセンターを置いています。新井清太郎商店は1888年に横浜で創業した輸出入商社で、食品事業のなかでガーリックやジンジャー、唐辛子、胡椒などの香辛料やハーブを輸入しています。アンビカは、インド食材の輸入・卸売・小売を行い、東京・蔵前などに店舗を構えています。

小売・ECと周辺事業者

富澤商店は、製菓製パン材料を中心に、全国約90店舗の直営店舗と自社オンラインショップで販売する事業者で、オンラインショップには「塩とスパイス」のカテゴリーがあります。サブスクのAIR SPICEや、クラフトコーラのOEMを受託する小規模な工房も、この層に含まれます。こうした事業者の事実項目は、後続の比較表ページに詳しく掲載しています。

カレー専門店の動向を倒産件数から読む

提供の層にあたるカレー専門店については、店舗数を網羅的に示す公的統計が見当たらないため、帝国データバンクが公表している倒産動向の調査が、動向を知る貴重な手がかりになります。同社の「カレー店」の倒産動向(2024年度)によると、インド料理店を含むカレー店の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は、2024年度に13件となり、前年度の12件に続いて高水準で、年度としては過去最多を更新しました。2025年度も、同調査の時点で4月から5月に2件の倒産が発生しています。

同じ調査は、個人営業などの小規模店の廃業や閉店が集計に含まれていないため、実際にはさらに多くのカレー店が市場から退出したとみられると記しています。背景として、原材料費や光熱費の高騰を挙げています。同社が算出する「カレーライス物価」は、2024年度に1食365円となり、過去10年で最高を更新しました。2020年度が273円、2021年度が279円、2022年度が294円、2023年度が309円という推移で、ごはんがコメ価格の高騰を背景に5年前から1.4倍、肉・野菜が5年前比で1.3倍に上昇したと記載されています。

調査はまた、カレー店の経営上の強みも整理しています。テイクアウトやデリバリーとの相性が良いこと、一人での外食からファミリー層まで幅広い層に人気のメニューであること、オーダーから提供までの時間が短いこと、仕込みに必要な食材を安価に調達できることなどです。そのため、個人での起業から外食チェーンの参入、レトルト専門の通販企業、キッチンカーまで、大小さまざまな事業者が進出してきたと述べています。一方で、欧風スパイスカレーがブームとなった2022年から2023年以降は、コロナ禍のデリバリー特需が一服し、ランチ需要などで他業態との競争が再び激しくなったことも指摘されています。スパイスの価格についても、中長期的に高止まりの傾向が続くとみられると記載されています。

広がるスパイスカレー・間借り・EC・サブスク

この数年で目立つのは、設備投資を抑えて参入できる業態の広がりです。間借り営業は、既存の飲食店が営業していない時間帯に、別の事業者がその厨房を借りて自分の店として営業する形で、初期費用を抑えられる点が注目されています。仕組みや許可の考え方は間借りカレー・スパイスカレー開業の基礎で整理しています。

家庭向けでは、レシピ付きのスパイスセットを定期的に届けるサブスクが登場しています。AIR SPICEの公式サイトでは、4人分のカレーを作るのに必要なスパイスを使い切りの分量で、毎月届けると説明しています。合計10種類前後のスパイスをインドから空輸で仕入れ、丸のままのスパイスと粉状のスパイスを特別なブレンドで小包装しているとの記載があります。サイトには2016年から2026年までの年ごとのレシピ一覧が掲載されており、継続して運営されている様子がうかがえます。

飲料の分野では、クラフトコーラが新しい物販の形として広がりました。小規模な工房がシロップを製造し、カフェや雑貨店が自店のブランドで販売できるよう、OEMを受託する事業者も現れています。ミールファームやジンジャーダイヤモンドの公式サイトには、小ロットから受託する旨が記載されています。詳しい事実項目はクラフトコーラ・スパイス加工品とOEMと比較表に載せています。

EC事業者も、スパイスの入手経路を変えています。アンビカのオンラインショップは、スパイスをグラウンド、ホール、ミックスに分類して掲載し、全国に販売しています。小林桂もオンラインストアの案内を公式サイトに設けています。業務用の卸を担ってきた事業者が、小口のEC販売に広げる動きが、公式サイトの構成から読み取れます。

数字を読むときの三つの注意

  • 統計の区分を確認する:「香辛料」の輸入統計と、事業者が扱う「スパイス」の範囲は同じではありません。品目や形状(ホール、パウダー、加工品)を確認してから比較します。
  • 倒産件数は一部しか表さない:帝国データバンクの集計は、負債1000万円以上の法的整理に限られます。個人店の閉店や、任意での廃業は含まれません。
  • 事業者の自己説明と評価は別物:公式サイトの記載は各社の自己説明です。当サイトの比較表は事実項目のみを並べ、優劣の判断は行いません。

市場規模を一つの数字で示す民間の推計は存在しますが、定義や調査方法が公開されていないものも多く、当サイトでは公的統計と企業の公式情報を中心に扱います。数字を引用する際は、出典のページと年次をあわせて確認してください。

一次情報の確認先

本サイトはスパイス流通・カレー業態・調合ビジネスを公開情報から整理した業界レポートであり、特定の店舗・商品・仕入先の推奨ではありません。スパイスやハーブに関する効能の説明は行いません。営業許可・食品表示・輸入手続きは保健所・消費者庁・検疫所等の公式情報をご確認ください。